現代のパン小麦を食べ、お腹が張る、詰まった感じがする等の感覚を覚えたことはありませんか?アインコーンはそうした感覚とは無縁かもしれません。普通小麦は食べられないが、アインコーンなら食べられたという方が実体験ベースで増えています。その理由は主に3つありそうです。
①デンプンの構造が違う
デンプンにはアミロースとアミロペクチンの2種類があります。アミロースはブドウ糖が直鎖状につながっている、α-アミラーゼによる分解が遅く、血糖値が上がりにくい分子構造をしています。一方、アミロペクチンはブドウ糖が枝分かれするようにできているため、α-アミラーゼによる分解が早い、血糖値が上がりやすい分子構造となっています。
アインコーン粒内のデンプンの構造は現代小麦と比べ非常に小さく、コンパクトにまとまっています。そのため、アミロースがアミロペクチンよりもさらにゆっくり消化され、食後のブドウ糖とインシュリン値を下げ、満腹感を持続させます。
また、アミロース自体も他の穀類と比べ少ないことも消化の良さに起因しています。エンマーよりも10%、ライ麦よりも20%もアミロースが少ないという研究結果も出ています。
染色体の数もアインコーンが14であることに比べ、パン小麦は42です。染色体の数が増えたことで、粒自体も大きくなりました。結果として、アミロースとアミロペクチンも増えたことになります。現代小麦は75%がアミロペクチンと言われています。
②たんぱく質の構造が違う
そもそもグルテンは80種類以上あるとされる小麦タンパク質のうち2つ(グルテニンとグリアジン)から構成されています。その中でグリアジンは大方の小麦アレルギーの原因となっています。アインコーンはグルテニンよりもグリアジンの比率が多いにも関わらず、その影響が少ないのです。その理由は、豊富なアミノ酸構成にあるようです。
こちらでも触れた通り、現代小麦は二つのエギロプス属との交配によりDゲノムのグルテンを獲得しました。このDゲノムがグルテン不耐性の原因となっています。アインコーンにはAゲノムしか存在していません。
実際に粉に触れてみるとその違いは明らかです。現代小麦は粘力があり、しっかりと膨らみますが、アインコーンはそうはいきません。長くこねる必要もなく、シンプルにすぐに焼成プロセスに進めます。
注意すべき点としては、アインコーンにも確かにグルテンが含まれているため、セリアック病の方が食べても大丈夫かどうかは科学的に証明はされていません。必ず医者に確認をすべきです。
③水溶性タンパク質が豊富
アインコーン小麦粉を扱うと分かりますが、現代小麦と比べ水分をそれほど必要としないことに気づきます。粉内のでんぷんが液体を先ず吸い込んだ後に、タンパク質が水分を吸収します。アインコーンのタンパク質構造は、水溶性タンパク質(グリアジン)の方が非水溶性タンパク質(グルテニン)よりも多い(2:1の比率)ことを示しています。一方、現代小麦などはその比率が0.8:1です。非水溶性タンパク質を消化するのは難しいため、アインコーンはより消化のしやすい小麦と言えます。
もし小麦由来の消化に悩んでいるならば、消化を促す方法として、1)天然酵母を使う、2)発芽した粒を使う、3)浸水させた粒を使う、の3つを試すとよいでしょう。
参照)3 Reasons Einkorn May Be Easier To Digest Than Other Types of Wheat